円高及びデフレ克服に対する提言
現在アメリカは経常収支の赤字および財政収支の赤字(いわゆる双子の赤字)を放置累積させ、その累計額が巨大な金額に達している。そのためにドルに対する信認が失墜し、双子の赤字を埋め合わせるために膨大な外国資金の流入が不可欠であるにもかかわらず、外国資金の流出に歯止めがかからない。
今アメリカはドル相場の急落リスクの状況にある。そのドル安のリスクを避けるため、欧州連合(EU)は、アメリカへの株式投資および直接投資を大幅に減少させた。中国もまたその外貨準備高のかなりの部分をドル建て資産からユーロ建て資産へと転換させている。
ただ日本だけが円安に誘導する目的でドル買い介入額を増大させ、昨年だけの介入額でも20兆円に達し、ドル建ての外貨準備高の累計額が6,735億ドルにまで激増してしまった。もしここで急激な円高ドル安の状況が生ずれば莫大なドル建て外貨準備高の評価損失が発生し途方もない国富が失われることになる。こうした危険を避けるために通貨当局は、ドルの急落を起こさないように、しかもできるだけ速やかにドル建て外貨準備高の大部分をユーロもしくは円に転換することが必要だ。
このドル買いの為替介入に代わって、円高およびデフレ経済打開の有力な手段は政府紙幣を発行し、国債を買入償却することだ(コロンビア大教授 ジョセフ・E・スティグリッツ氏の提案)。この政府紙幣の発行による国債の買入償却については、その買入償却額を適切に管理し、長期的に調整していけば、ハイパーインフレーションを発生させないで望ましいと考えられるおおむね2%程度のインフレターゲットに導くことが十分可能である。
現在、アメリカ景気と輸出に支えられて一部のIT・通信・自動車または素材関連の大手製造業等については収益状況の改善がみられるが、中小とか地方では依然として厳しい状態だ。従って全体としての雇用も増えず消費需要も増えない。税収も落ち込む一方だ。デフレ克服の目標についても2003年から2005年にずれ込みプライマリーバランスの黒字化も2013年とされている。プライマリーバランスの回復のため増税をセットするのでは、橋本内閣時代の再現で景気回復は望むべくもない。
現在の日本のように、プライマリーバランスの大幅な赤字をかかえ、しかも日銀の金融機関に対する貸付金利(無担保コールレート・オーバーナイト物金利)をゼロ%近傍で推移させている状況では、伝統的な金融政策手段または財政政策手段は出動不可能である。
そこで最後に残された国富が失われる可能性がほとんどない非経常的な政策手段、すなわち適切に管理された形での国債の買入償却を行うという政策がどうしても必要不可欠となる。そしてまたそれこそが2%程度のインフレターゲットに導く唯一の政策手段ではないだろうか。 |